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帰りのバスの中で [結願後]

メメント・モリ。
「死を想え」という言葉がありますが、
お遍路に出た者は、
自然と死を想います。

自らの格好が死に装束。
卒塔婆代わりの金剛杖を持って、
死国を歩くのです。

遍路道の側には必ずお墓やお地蔵さんが立っています。

お遍路さんが、
行き倒れになると、
その場へお地蔵さんを立てたそうです。

最後の八十八番大窪寺へ向かうには、
女体山に登り、胎蔵峰を越えて行きます。

女体山の胎蔵峰とは、
母の胎内のことでしょう。

結願(けちがん)すること。
つまり、死に装束のお遍路さんが、
再び、母の胎内から生まれ出るという意味でしょうね。

結願後、
そんなことをぼんやりと考えながら、
コミュニティバスに乗りました。

高速志度で、コミュニティバスを降り、
大阪行きの高速バスに乗り換えます。

もう夕方です。
しばらく、バス停で待っていますと、高速バスがやってきました。

運転手さんが、
「大きな荷物はトランクへ入れて下さい。貴重品は車内へ」
と言ったので、
7キロあるバックパックは、迷わずトランクへ入れましたが、
さて、金剛杖はどうしましょう。
金剛杖はお大師さん。

貴重品と言えば、貴重品ですが、
誰も捕る人はないでしょう。
それに、車内に持ち込んでも使いませんし、長いので邪魔になるだけです。

しかし、私の気持ちとして、
トランクには放り込めないのです。

八十八番で、手放そうとしましたが、
それも叶わず、今でも、私の手にあります。
一番からずっと一緒に歩いて来た金剛杖。
薄暗いトランクに入れるのは申し訳ない気がします。

そこで金剛杖を車内へ持ち込むことにしました。
日曜日ですから、満員です。
後方の席に着きましたが、
ずっと杖を持っている訳には行きません。
頭上を見ると、棚にはほとんど荷物がありませんので、
杖を横にして、棚の上に置きます。

高速バスは動き出します。

バスが大きく揺れると、
頭上でリンリンと鈴が鳴ります。

「しまった」
私の杖には鈴が付いています。
お婆さんにお接待で頂いた鈴。
ずっと付けております。

私は毎日毎日聞き続けている、
自分の鈴の音ですから、耳に馴染みがあり、実に心地よく聞こえます。

しかし、満員のバスの中。
他の方にとってはうるさい鈴の音に違いございません。

リンリン、リンリン。

結構、バスが揺れます。

「ああ。トランクに入れた方が良かったな」
と思いましたが、
今更、どうすることも出来ません。

リンリン、リンリン。

頭上で鈴が鳴っています。
目を閉じて、お遍路の43日間を振り返ります。

辛い日もありました。
雨の日、呆然として、立ち尽くしたことが何度もありました。
それでも、自分が歩かないと、決して前へ進まないので、歩き続けてきました。

終わってから、
振り返ると、そんなこともあったのに、
楽しい思い出ばかりです。
本当に楽しかった。
行って良かったです。

毎日が新鮮で、新しい発見があり、身体が逞しくなっていく面白さもありました。

「楽しかったなあ」

バスの中で、多幸感に包まれています。
苦しみも悲しみも痛みも不安も何もない、
ただただ幸福で、安心感に包まれています。
バスの揺れ、
鈴の音、
どれもこれも、凄く気持ちが良いです。

「ああ。また、お遍路に行きたいなあ」
そう思いました。
これなんでしょうね。
お遍路に一度行った方が、
四国病に罹り、二度、三度とお遍路に行ってしまうのは、
この多幸感があるからでしょう。

夢のような、現のような、そんな気持ちで、バスに乗っています。
バスの外は真っ暗。
もう夜です。

リンリン、リンリン。

ぼんやりしながら、目を開けると、
バスが海の上を走っています。
明石海峡大橋です。

多幸感に包まれている私は、
半分、寝ぼけているのでしょう。
この明石海峡が、どういう訳か三途の川のように思えます。

「ははん。三途の川も、昔は舟で渡っていたが、近頃は近代化されて橋が出来ているのだな。バスで渡るのか。昔は六文だったが、今は値上げして、三千七百円(高速バス代)か。三途の川を渡るということは、死んだんか。お遍路を終えて、生まれ変わったと思ってたら、死んでたんやなあ。これからあの世に行くのか」

前を見ると、本州の夜景が実に綺麗。
眩いばかりにキラキラと輝いております。

「ああ。極楽や。極楽に行くんや。綺麗やなあ」

リンリン、リンリン。

鈴の音を聞きながら、気持ち良く眠りました。

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